相談に来る人の質問が、前より整理されている。
こちらが確認しようとしていたことは、もう調べ終わっている。
そういう場面が、少しずつ増えていないでしょうか。
本来なら助かる話のはずです。それなのに、手放しでは喜べない感じが残る。
「自分に聞かなくても、もう進むのではないか」
私も、そう考えていました。
人から相談を受ける側に立っている人。コンサルティングやコーチングの場、講師、士業、受託の仕事、社内で相談役をしている人。
私も、その一人です。
先に言っておくと、私の出番は、なくなっていません。ただ、残った場所は、当時の私が必死で守ろうとしていた場所とは違いました。
「どうすればいいですか」が「これをお願いします」に変わりました
ある日、届く相談の文面が変わっていることに気づきました。
以前は、こういう形でした。
「これはどうすればいいんですかね」
ほとんど丸投げです。何をどうしたいのかというところも含めて、こちらで一緒に立て直すところから始まっていました。
それが、ある時期から、こう変わりました。
「これをこうしたいんですけど、どうしたらいいですか」
「できますか」
「お願いします」
やりたいことが決まっていて、順番も決まっている。AIとのやり取りを通して、ある程度整理された状態で持ってこられるようになりました。
AIが代わりにやったのは、答えを出すことというより、頭の中にあった塊をほぐすことでした。
何がやりたいのか、どこが引っかかっているのか。言葉に分けるところまでを、相手が一人で終えてくるようになった。
私がこれまで一緒にやっていたのは、まさにその部分でした。
やる前に来ていた相談が やった後に来るようになりました
変わったのは、質問の形だけではありませんでした。今度は、相談が届く時点のほうです。
以前は、こう聞かれていました。
「こういうことをやってみようと思うんだけど、どう思いますか?」
やる前です。手を動かす前に、一度こちらを通していました。
それが、こう変わりました。
「こうなったんですけど、どう思いますか?」
やった後です。まずAIを使って自分でやってみて、その結果が出てから持ってくる。
AIを使えば、実装が楽なんですよね。試すのにかかる手間が下がったのなら、先に試してしまったほうが早い。
順番としては、そちらのほうが自然です。
相談が減ったわけではありませんでした。私がずっと立っていた「実行の手前」という場所が、そこだけ空いていました。
このまま自分はスルーされるのではないか
当時の私は、この変化を、正直、素直には見られませんでした。
「このまま自分がスルーされてしまうのではないか」
「必要がなくなってしまうのではないか」
そういう危機感がありました。
別の形で存在感を発揮できるようにするには、どうしたらいいんだろう。そんなことを考えていた時期があります。
この不安は、AIで初めて生まれたものではありません。クライアントが成長すると、自分の役割がなくなるのではないか。
相談を受ける仕事をしている限り、この不安は常にあります。だから私は、クライアントは成長するという前提で、自分はそれ以上に成長して、常に前を先導していられるようにしたい、と自分に課してきました。
ややこしいのは、私自身が、クライアントにAIを勧めている側だということです。使っていない人には使うように促しますし、うまく使えていない人には、もっといい使い方があるよと、惜しまず伝えてきました。
その結果どうなるかも、重々考えてはいました。そこは、正直、複雑なところです。
それでも、役割が脅かされるからといって情報を与えない、ということだけは、ポリシーとしてやりませんでした。これからも、やるつもりはありません。
つまり私は、自分の出番を減らすかもしれないものを、自分の手でクライアントに渡していたことになります。
この危機感が的外れだったとは、今も思っていません。整理と実装が、実際にAIでできるようになったのは事実だからです。
そこはもう戻りません。
分かっていなかったのは、それが全部だと思っていたことのほうです。
空いた場所を 知識と対話力で埋めようとしていました
そのときに考えたのは、二つでした。
一つは、もっと専門的な知識を身につけて、知識の量で圧倒すること。もう一つは、対話の能力をもっと磨いて、相談を受ける相手として、もっと強い場所にいられるようにすること。
やりかけた部分も、多少はあります。ただ、どちらも途方もない話で、どこから着手していいかわからない。
知識も対話も、日々少しずつ積み上げていくものであって、いきなり覚醒したかのようにレベルアップするわけではありません。そんなことができるんだったら、とっくにやっています。
案とはいえ、案になっていなかった。実現不可能なことを考えていたのだと、今は思います。
それに、どちらの案も同じ形をしています。
もっと多く知っている。もっとうまく聞ける。
足りないから通られなくなったのだ、という前提が、二つの案の下に共通で敷いてありました。
私がやろうとしていたのは、空いた場所に、もっと重いものを置いて埋め直すことでした。今から思えば、空いた場所に戻ろうとしていたのだと思います。
私の出番は なくなったのではなく後ろにずれていました
そこからしばらく、その状態が続きました。相談の形も、届く時点も、変わったまま元には戻りませんでした。
その中で、分かってきたことがあります。
「それでもやっぱり、不要にはならないんだな」
確信が持てたわけではありません。ただ、ありがたいことに、自分を必要としてくれている、というのは非常に感じるんですよね。
丸投げが整理に変わったのは、私を通らなくなったからではありませんでした。
AIとのやり取りで下積みを作って、整理された状態で、さらに質の高いやり取りができるように、準備をして持ってきてくれる。そういうことが、よく起こっています。
実際そのおかげで、やり取りは前より効率よく、深いところ、高いところまで届くようになりました。
AIと話して、頭の中を整理する。AIを使って、まず自分でやってみる。
そこまでは、相手が一人で進められるようになりました。では、その先に何が残るのか。
出てきた案は、本当にそれでいいのか。やってみた結果を、どう見るのか。
うまくいかなかった原因は、どこにあるのか。次に、何を試すのか。
私に届く相談は、少しずつ、こちら側に移っていました。その上でのフィードバックと、その上での相談事。
そこには、まだ自分が必要とされる余地がありました。
そしてこの仕事は、相手が一人で整理を終えて、一人で実装を終えたあとに、はじめて発生します。私が空いたと思った「実行の手前」の、その反対側です。
AIは、相談をなくしたのではありませんでした。相談が始まる地点を、後ろに動かしただけでした。
つまり、私の出番が消えたのではありませんでした。後ろにずれていました。
劇的に解決した、という話ではありません。相手が成長していくことへの不安が、消えたわけでもありません。
それは、この仕事をしている限り、たぶんずっとあります。
もし今、自分の出番が減っている気がしているなら、直近で届いた相談を一つ、「やる前」に来たものか「やった後」に来たものかで分けてみてください。
探究の続きを、一緒に
ただ、出番が後ろにずれたということは、こちらが渡すものも変わったということです。
整理を手伝うのであれば、進め方を知っていれば足ります。けれど、出てきたものに対して「それでいいのか」を返すとなると、返しているのは自分の判断そのものです。
何を大事にしていて、何は避けたいと思っているのか。そこが自分の中で言葉になっていないと、返す言葉はどうしても一般論のほうへ寄っていきます。
まずは、最近誰かに返したフィードバックを一つ、自分は何を基準にそう言ったのかまで書き出してみてください。
そのために作ったのが「自己探究コンパス」です。いくつかの問いに答えていくうちに、自分の輪郭が少しずつ言葉になっていく、対話型のアプリです。
数秘術・MBTI・エニアグラムを組み合わせて作りました。軽く試せる「3問コース」と、もう少し深く考える「8問コース」があります。
探究の最後には、見えてきた輪郭を「持ち歩きプロファイル」という一枚のテキストとして受け取れます。普段お使いのAIにそのまま渡せば、あなたの深いところを分かったうえで相談に乗ってくれる、あなた仕様の相棒になっていきます。
このニュースレターを購読してくださった方にお渡ししています。ニュースレターでは、こうして自分の内側を見にいく探究の途中経過を、そのまま書き送っています。
自分のことを丁寧に知りたい方に。
そして、AIを自分の相棒に育てたい方に届けたいと思っています。
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I liked the idea that the role did not disappear, it just moved further back in the process. Once AI helps someone organize and try something on their own, the human value may become less about giving the first answer and more about helping judge what happened next.
AIの進出による不安を赤裸々に語ってくださりありがとうございます。教育業界もまさに同じ状況です。だからこそ、自塾はアナログ回帰です。